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東京高等裁判所 昭和30年(ラ)406号 決定

抗告人(相手方) 和進商工株式会社

相手方(申立人) 日本曹達株式会社

主文

原決定中「債務者は如何なる名目乃至方法を以てするを問はず、金員の借入をしてはならない」とある部分を取消す。

相手方の前項掲記の部分に関する保全処分申請を却下する。

第一項掲記の部分を除く原決定のその余の部分に対する本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は別紙記載の通りである。

按ずるに抗告人の本件抗告理由は、これを要するに抗告人には何等の破産原因がないから、本件保全処分は失当であるというに帰着するが、破産法第一五五条に基ずく破産宣告前の保全処分をなすについては、必ずしも破産原因の要件の存在についての証明を俟つまでもなく、破産申立が形式上適法になされ且つ主張する事情が法律上並に事実上一応理由ありと見えれば足りると解するのが相当であるところ、本件破産事件記録によれば本件破産申立についてはその申立は形式上適法であり且つその主張する事情は法律上並に事実上一応理由ありと認め得るから、本件保全処分申立は、破産原因の証明を俟たずこれを許容し得るものというべきであり、抗告人の主張する抗告理由は、以上の説示に徴し到底採用し難いといわねばならぬ。

ただ右保全処分は、一に将来破産宣告がなされる際における破産財団に属すべき財産の散逸、毀損、滅失、価値減少等を防止して、破産財団を保持せんとする目的のためになされるものであると解すべきであるから、この目的を達するに必要で十分な限度において定めらるべきものというべきである。然るに原決定中主文第一項掲記の部分は、明かに右の目的を逸脱し、徒らに債務者の自由を拘束するものであり、不当であると認められるから、これを取消し、この点に関する相手方の保全処分申請は却下すべきものである。

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